「視えるんです」
しばらく歩いた時、ふと思い出す。
そういえば私……あの時、どうなったんだろう。
先生は『軽い貧血』と言ったけど、あの時私は、あの鏡の女を見たあの時、どうなったんだろう。
「あの、先輩。 私、あの時どうなったんですか?」
「ん?」
「鏡の人を、見た時……なんか、記憶が曖昧で」
踊り場の鏡の前に立っていた時、リボンを後ろに引かれ……気がついた時は、自分のベッドの上で。
そこに居た先生は、ホンモノじゃなくて、よくわからない化け物で……。
首を絞められ、殺されそうになったけど……先輩の声が、した。
あれは、夢……ううん、現実、なんだろうけど。
でも気がついた時は保健室のベッドの上。
鏡がどうなったのか、私の部屋に居たアレは、どうなったのか。
色々と思い出してきたら、わからないことばかりだ。
「半沢ティーチャーが言ったように、『軽い貧血』で倒れたんだよ。
廊下に居た生徒たちや近くに居た先生たちで、一時騒然となった」
「そうだったんですか?」
「うん。 半沢ティーチャーがキミを保健室に運んで、俺は鏡の前へ。
そこでちょっと、あの女と話をね」
……話……。
あの女は生きてるものを引きずり込もうとする危険な奴だと言っていたのに、先輩は、ソレと話をしたんだ……。