「視えるんです」
「送っていただき、ありがとうございました」
「いや、俺の家もこっちの方だから。
あぁそうだ、何かあったら連絡して? なるべくすぐ出るから」
と、鞄から取り出したノートのページを少しだけ破り、そこに何かを書いて私に手渡した。
そこに書かれていたのは、携帯の電話番号。
「え、いいんですか!?」
「うん」
「わぁ、ありがとうございます!!」
先輩の電話番号だ!!
やったぁ、これで連絡し放題!! ……って、あんまりしつこく連絡するのは迷惑だよね。
うん、『何かあった時だけ』連絡しよう。
それはそれで、ちょっと寂しいけど……。
「あ、私の電話番号も書きますね」
「いいよ、知らない番号から電話が来たら南沢さんだと思って出るから。
て言うか、部屋着いたら電話して」
「あ、じゃあソッコーで電話します!!」
「楽しみにしてる」
そう言った本田先輩はとても優しく手を振り、私もそれに応えるよう、大きく手を振った。
先輩との距離が、遠くなっていく。
もっとそばでお話したかったけど、今日はもうこれでバイバイしなきゃいけない。
このあと電話するとしても……やっぱり寂しいなぁ……。
「南沢さん」
「はい?」
先輩が、また笑う。
「幽霊の話、あんまり怖がらなくなったね」
「え……そうですか?」
「泣いたり叫んだりしてないから、ちょっとは慣れたのかも」
「……怖いものなんかに、慣れたくないですよぉ……」
「あはは。 でも、必要以上に怖がらないっていうのは、大事だよ。
泣いたり叫んだり、必要以上に怖がると、怖くないものですら怖く見えるものだから」