「視えるんです」


………

……




先輩と別れ、自宅へと帰ってきた。

両親は共働きで、いつも暗くなってからしか帰ってこない。

それまで私は、一人……。


いつもはテレビを見たり音楽を聴いたりして、怖いことは考えないようにしていたけど。

今日はやっぱり、考えちゃうなぁ……。

だって、鏡の女は、『私の部屋』に現れたから。


夢や幻と呼ばれるようなモノだっただろうけど、それでもリアルだった景色は、ドアを開けるのを躊躇わせる。

……でも大丈夫、部屋に入ったら本田先輩に電話するんだ。

先輩と電話してる限り、怖いことなんてないもの。

大丈夫、大丈夫。


そう言い聞かせ、自室のドアを思い切り開いた。


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