「視えるんです」
「な、なんで雨宮さんがここに!? ていうか、『目』だけじゃないんですか!?」
「写真に全部を写すってのは大変なんだよ。 俺は目がいいから、目だけが写ったわけだ」
「そ、そうなんですか……。 あの……イケメンさん、ですね」
「お前、今の今まで怖がってたくせにどんだけ調子いいんだ」
「いえ、なんていうか……一応、知ってる人、だったので。 あ、お話するのは初めてですけど」
……不思議だ。
最初は凄く怖かったのに、『雨宮』と聞いた瞬間、怖さはなくなった。
「あのぉ……どうして、雨宮さんがここに?」
「俺は浮遊霊ってやつだからな、どこに居ようが俺の勝手だ」
「……自分が霊だっていう自覚があるんですね」
「あぁ、俺は普通じゃないからな」
普通じゃない。 そう言った雨宮さんは、私と視線を合わせるようにふわりと横に来た。
「俺も先生や本田のように、視えたんだ。 だからこそ、俺は自ら望んでこの世界に来た」
「え?」
「本田から聞いただろ? 『 雨宮は傍観している』と。 まさに、それだ」
……確かに先輩は言っていた。
雨宮は、人間の生き様や霊たちの行く末を傍観している、と。
「人は何故生きているのか。 そして、何故死んだ後も生き続けるのか。
今まで誰も知り得ることのなかったことを知る。 それが俺の目的だ。
だからこそこの世界に自ら飛び込み、そして上手いこと幽霊という存在になれたわけだが」
「だが?」
「俺は一つ、重大なミスを犯した」
……ミス。
それって、鏡の女に引きずり込まれたことを言ってるのかな。
あの女が雨宮さんを捕らえ、目的を達せなくさせた……それが、ミス……?
「俺のミスっていうのは……死んだら何も出来ない。ということに気付かなかったことだ」
……え?