「視えるんです」





「俺がこの世界を解明したとしても、『俺』が発表出来ないんじゃ意味がないだろう?
俺は『俺』という名を世に残したいんだ。 なのに出来ない。
それが俺の犯した重大な、そして愚かなミスだ」




……あれ。

なんか、え……ちょっと、想像してたのと違う……。




「死ぬ前はな、イケると思ったんだ。
こっちの世界に来てしまえば、今までわからなかったことがわかるようになる。
俺の名が世界に知れ渡る。 永遠の謎を解明した英雄になれる、と。
だがどうだ、死んだら何も出来ないじゃないか。
英雄になれるどころか、俺はフラフラ漂うただの浮遊霊。 何も出来ない、ただそれだけの存在だ。
挙げ句の果てに、あのクソ女なんかにやられるとは……生きていた頃ならあんな女一撃で潰せたものを……」

「…………」




……この人は多分、いや、絶対馬鹿だ。

どこが物静かな奴なんですか、本田先輩……。




「……えーっと、雨宮さん。 それで、何故私のところに?」




とりあえず、英雄とかその辺は、スルーしよう……。

うん、気を取り直して、何故私のところに来たのかを聞いてみよう。


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