「視えるんです」




「南沢。 さっきのは冗談だから、これ以上怖がるなよ」

「ふぇ……?」

「悪かった」




涙でグチャグチャな私の顔を、雨宮さんが撫でる。
正確には、触れられてはいないけど……でも、雨宮さんが手を伸ばしただろうところが、ほんのり温かい。

私が今感じているのは、恐怖じゃなくて、安堵。

人のぬくもりによく似たそれが、私の心を落ち着かせていく。




「拭ってやることが出来なくて、すまん」

「い、いえ……」

「さて、本題に入ろうか」

「え……本題、って……」




……今までのやり取りはなんだったんですか。

と思ったけれど、そこは黙って話を聞くことにした。




「あ、本題の前に、まずはちゃんと自己紹介から始めようか。
俺の名は雨宮。 下の名前は忘れた。
もう何年も昔になるが……とある学校の屋上から身を投げ自殺した。
当時18歳。 っつーことだから、今もその当時の姿ということになる。
自殺の理由は、まぁほぼさっきの通りなんで省略」




……それはさっきの通りなんだ。

英雄になるとか、そんな感じの話だったよね。
あれは、マジだったんだ……。





「俺はあちこちの学校に赴き、『学校の怪談』を見学してきた。
そして、あの鏡の女と出会ったわけだ」




ゴクッ……。

あの女の姿を思い出すだけで、背筋が寒くなる。
だけど雨宮さんは言葉を止めず、自分が視てきたものを話す。


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