「視えるんです」
「綺麗な女だな。と、それが最初の印象だ。
だが力は強く、そしておぞましく。 気付かれないようにしていたけれど、気付かれてしまったんだ。
で、マズいと思った時には、もうヤツの腹の中。
ヤツは俺の力を利用し、姿を隠した……と、この辺りは本田に聞いただろうから省略」
……うん、先輩に聞いた通りだ。
その先輩に話したのは、多分雨宮さん本人なんだろう。
そして先輩が私に話しているのを、近くで聞いていた。
だからこそ、次に話す部分がハッキリとしている。
「俺を助けてくれたのは、知っての通り、半沢先生だ」
……退治屋、半沢先生。
「あの人は、ずっと俺に気付いてた。 ヤツの腹の中から見てたけど、ずっと目が合っていたから間違いない。
でも何かしてくれるわけじゃなく、ごく普通にトイレを利用し、出ていく。 それだけだった」
「え……先生最悪じゃないですか……」
「タダ働きはしない。 そういう人だからな」
……あー……確かに、そう言ってた。
タダ働きはしない。 報酬次第。 それが、半沢先生。
だけどそれでも先生は、雨宮さんを救い出したんだよね?
一体、どうやって……?
「とある男子生徒がな、引きずり込まれそうになったんだよ」
「え……」
「そいつは同級生にイジメられていて、相当弱っていた。
で、いつも隠れて泣いていたのがあのトイレ。 弱い部分を、トイレでさらけ出していたわけだ。
つまりは、わかるだろう?」
「……弱い部分に、つけ込まれた……」
「正解」
私もその男子生徒と同様、弱い部分に、つけ込まれた……。
「その男子生徒は、トイレで自殺しようとした。
ネクタイがロープ代わりだ。 わかるか? あの女が、そうさせたんだ。
自分が死んだ時と同じように、って。 男子だから、リボンじゃなくてネクタイだったけどな」