「視えるんです」
「さて、ここで本題だ」
……あ、ようやく本題なんだ。
ずいぶん長い前置きだったけど……まぁ気にせず黙っておこう。
「お前は、本田のそばに居ない方がいい」
「え……?」
「アイツと出会ってから、お前は怖い思いをしただろう?
この先も、アイツと居る限りお前は危険な目に遭う。 これは絶対だ」
危険な、目……。
ーー『巻き添えを食わないという保証は、無いんだ。
キミだって、もう既に危険な目に遭ってるじゃ
ないか』
先輩の言葉が、頭に浮かぶ。
確かに先輩は言った。 巻き添えを食わないという保証は無い。と。
いや……こうやって視えてしまったことが、もう既に『巻き添え』と呼べるのかもしれない。
先輩と会ってしまったから、私は視えるようになってしまった……?
「このまま一緒に居たら、お前は死ぬ」
「……」
「本田も言っていただろ? お前は弱い、と」
……うん。 私は、自分の弱さを自覚してる。
でも先輩は、私を守ってくれると、言ったから……。
「お前は、足手まといなんだよ」
「……っ……」
「お前に気を取られ、本田は余計な手を出す。勝てない相手とわかっていても、『守る』ために自分を犠牲にする。
お前が本田のそばに居なければ、余計な力を使う必要はないんだ」
わかるか? 南沢。そう問いながらも、それは問いではなく、強制的なもので……。
私の言葉を望んではいない。そんな感じがした。
私が何を言っても、意味はない。
私は足手まといだから、これ以上、先輩のそばに居てはいけない……。
それが、雨宮さんが言う『正しい答え』なんだろう。
だから私は、頷く以外のものは、させてもらえなかった。
先輩のそばに居たい。 そう思いながらも、声は出なくて……体も自由がきかない。
「近づけば死ぬ。 お前だけじゃなくて、本田もな」
そう言った雨宮さんの半透明な体が、徐々に霞み……数秒のうちに消えた。
邪魔をするな。と、そう言い残して。