「視えるんです」
GS半沢


………

……




雨宮さんと話した、数日後。

私はまた、音楽の半沢先生に『居残り』をさせられていた。


前回と同じ、理不尽な理由での居残りだ。

友達には『付き合ってるの?』なんて茶化され、うるさい男子にはヒューヒューとはやし立てられ。

それに対する先生は『コイツは面白いからな』と、わざと肩に手を置いてきて、ニヤリと笑い。

そんなことをするもんだから、クラスメートたちは騒がしくなり……。


……とにかく、アレだ。

今の私は、すこぶる機嫌が悪い。




「そう怒るなよ南沢。 どうせ誰も本気にゃしてねぇんだから」

「先生はいいですよね、音楽の時しか会いませんから。
同じ教室で勉強してる私は、延々とヒューヒュー言われます、絶対」

「ははは、そうかそうか、そりゃあ愉快だ」

「首へし折りますよ?」




今の私なら、マジで首をへし折れそうだ。

いっそ、本気でやってみようか。 なんて思った時、先生が言う。




「首の話はどうでもいいが、お前、本田と会ってないのか?」




……いきなり、聞かれたくないことを聞いてきた。
いや、なんとなく、そのことで残したのだろうと予感はしてたけど。




「……会ってません。 今のところ、何もありませんから」




そう……不思議と、何もないのだ。

私は視えるようになってしまったはずだけど……今まで視たのは、雨宮さんただ一人。

妙な気配を感じることもなく、至って平和な毎日を送っていた。


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