恋愛のやり直し方
「何か予定でもあった?」



「え?いや…その………特に急ぎではないので大丈夫です」




キッチンにコップを持ってきてくれた友田が、私の顔を覗きこむ。





「そう?だったら楽しむといいよ。いいもの食わせてもらえるよ。出版社の経費なんだから」



「そうなんですか?」



「っそ。一応俺の接待ってことになるんでしょ?」





「そうだんだ。
人気作家ともなれば、出版社から接待も受けられるんだ」







「あのね、人気かどうかは分からないけど、俺一応数字稼ぐから」



「えっ?聞こえてました?」




聞こえないように言ったつもりが、丸々聞こえていたらしい。




「この距離で聞こえない方がどうかしてるだろう?あのさ、森嶋さん、もう少し周りを良く見た方がいいよ。だから竜みたいな若造に付け込まれるの」



「………はい。すみません」

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