てんしからのプレゼント

虚言がいい。

三月に入り今のクラスメイト過ごす時間も残りわずかになったある週の土曜日、あたし以外誰もいない家でなった電話の音は今でも忘れられない。

違う、耳にこびり付いて剥がそうとしても……無理だったんだ。



「もしもし、佐藤ですが」


『佐藤さん?…よかった、繋がって。もう知っていると思うんだけど




″森田さん"がお亡くなりになったの。



それでね、告別式は私たちのクラスだけ参加することになって――…』


「せ、先生?その、″森田さん″って…」


『……森田 那智さんよ』


「な、那智が……死んだ……?うそ、ありえないよ」


『佐藤さん?大丈夫?…佐藤さん?』



ありえない。昨日、そう、昨日さ、また来週ねって…ばいばいって。




待って、


昨日『また来週ね』って言ってた?




言ってなかったかもしれない。


あ、そういえば少し顔色が悪かった気もしない。



「なんで…気づいてあげれなかったんだろ…」


『佐藤さん?あなた、何か知っているの?』


「あ、ああたし…せんせ、那智は」



『どうして死んだんですか?』この質問を口に出すことができなかった。



簡単だと思う。


鼻で息を吸って口から息を吐き出しながらのどに力を篭めればいいだけなのだから。



それができないのはまだどこかで生きているんじゃないかって期待しているからだと思う。




思う?




     違う。





        期待しているんだ。












   また来週おはようって笑顔で言い合う風景を。









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