不思議な“キツネ”ちゃん

京さんの墓には彼女がいた。


涙で顔を濡らしていたけど、
アノヒトはなんて声をかければいいか
分からなくて。


そのままお辞儀だけをして京さんに
準備したものを供えた。

話したいこともいっぱいあったけど。


隣にいる彼女が気になって言えないまま
帰ろうとした。




帰ろうと背を向けた時に。


彼女は最低な言葉を放った。


「泣かないんですか?

それでよく墓参りに来ましたね。

あなたが京を殺した!

京を返して!」



京さんが亡くなったのは
交通事故なのに。


頭の整理ができてなかった彼女には
涙も見せないアノヒトが最低の人に見えたのかもしれない。



でもその一言でアノヒトは傷付いた。

彼が気にしている部分を、

友達を亡くして穴の空いた彼の心に


突き刺した。

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