不思議な“キツネ”ちゃん
遺書にはもう生きられない、と。
私になんの言葉もなく。
ただそれだけが書いてあった。
それから私は彼の会社を受け継いだ。
これは昔、弁護士を通して決めた。
会社を経営しながらアノヒトの理由を
探した。
理由はすぐに判明した。
いつも墓にいる彼女。
彼女に直接聞いたのだ。
鹿野朱理、に。
もちろんその時はまだキツネを
被ってなかった。
最初はあまりのショックでそのまま
帰ってしまった。
でも冷静になって考えると頭に来た。
だから。
アノヒトの作った会社で京さんの会社に圧力をかけた。
彼女を恨んでた。
憎んでた。
殺意を抱いてた。
でも。
ある日気づいた。
こんな事しても無駄だ、と。
それよりもアノヒトのところに
逝く方が幸せだ。
そう思い直した。
高校は卒業することはアノヒトとの約束だったから。
私よりも先に死なないと、
約束したアノヒトに私は
約束を守ったよ、あなたと違って。
そう皮肉で言うために今まで生きた。