不思議な“キツネ”ちゃん
健《サイド》

俺の中でスヤスヤと眠る少女は
逝ったあいつの妻だった。

いや今も、か。

昔から朱理が好きで一緒にいた。

朱理が友達の京と付き合い出しても
好きな気持ちは変わらなくて。


このままではダメだと思って
京にだけは自分の本当の気持ちを
話して離れようとした。

それが最良の道であると考えてた。


でも京は離れるなと言った。

「俺はさ、自分勝手で我儘な奴なんだ。
唯一の友達のお前を離したくないし、
大好きな朱理も離したくない。

俺の隣にいる事は苦痛かもしれない。
それを思うとお前を離す方がいい、
そう思ったけど、それ以上に俺は
お前がいない生活に耐えられないんだ。

俺の我儘を聞いてくれないか?
距離を置くのはいいけど、
離れないでくれないか?」


そう、俺に言った京の顔は忘れない。

いつも頼れる存在である京が
初めて俺に弱さを見せた瞬間だった。


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