不思議な“キツネ”ちゃん
少し寝たから治ると思ってたけど。
傷が深いから行かないときっと
治らないんだろうなぁ。
はぁ。
ため息を付く。
そのままベッドの隣にある、
小さな棚に手を伸ばす。
上に乗ってる黒いダイヤル式の電話機で
行きつけの病院に電話する。
「もしもしこちら佐々木総合病院です」
「佐藤宏樹先生はいますか?」
「はい。ご予約ですか?」
あの先生は人気だから予約が必要。
まあ、大丈夫だろう。
「はい。羽咲帝です」
「羽咲帝さんですね。時間は、」
時計を見ると5時。
ここから出発しても1時間はかかる。
「6時ごろに行きます」
「分かりました。失礼します」
ガチャン。
受話器を戻して立ち上がる。
「私」になる、準備をしないと。