不思議な“キツネ”ちゃん
「羽咲帝。久しぶりね」
鏡の「私」に言う。
高校に入学してから3回目、か。
1回目は会社の用事で。
2回目はアノヒトの墓参りで。
私の隣に必ずいた人がいなくなって
慣れたはずなのに。
「私」の隣にいないのは何故か、
違和感が隠しきれない。
私の部屋の本棚には秘密通路がある。
ある本を引っ張ると棚が移動し、
後ろの扉が出現する仕組みだ。
扉を開けて進んで行くと学校の外にある
神社にでる。
私だけの秘密通路だ。
私の向かう病院はタクシーで行く。
だから携帯を持ってきたのに。
「よう。久しぶりだな、帝」
何故そこにいる。
「宏樹」
真っ黒のベンツに体を寄っかかる、
長身でスーツをきこなしてる奴。
世の中の女性が好きそうな甘いマスク。
スタイルも良く程よい筋肉をもち、
医師をやっている。
それが佐藤宏樹。
私の一応、担当医。
そしてアノヒトの担当医でもあった。