不思議な“キツネ”ちゃん
矢島隆〈サイド〉


学校の一番奥の教室。

そこが俺らの居場所。


教室の中は先代が改造してくれて
何処かの高級ホテルみたいになってる。

真ん中にある高級ソファに
偉そうに座っているのは仲間ではなく。

「…なんか女王みたい」

客人であるはずのキツネ。

ポツリと思わず呟いてしまうほど
様になっていた。

「えっと、コレなに?」

キツネの正面に座ってる俺に
戸惑った顔を見せる二人の仲間。

染めてない綺麗な茶色と透き通る金色。

どちらも天然で自然な色だ。


「まず、自己紹介してくれる?」

俺の定位置で、
首を傾げるキツネの言葉に頷く。

「静雅、慎吾。アレは藤咲のキツネ」

「キツネって、あのキツネ?」

「支配者のキツネだよ、静雅」

静雅はサラサラな茶髪で不思議な奴。

フアフアしてるってゆーか、
まあ、変な奴だ。


「あのキツネが何でここに?」

慎吾はブルーの瞳を鋭くさせた。

「コッチに付くって。キツネが」

慎吾は信じられないようでキツネを
凝視する。

自然な金色は光に当たると綺麗で、
ブルーの瞳は仲間以外に鋭い。

疑い深く慎重な奴だ。

「シズカにシンゴ、ね」

キツネが静かに呟く。

顔が見えない分、
何を考えてるのか不明だ。

「んー、同じ船に乗るってこと?」

静雅がキツネに聞く。

あの恐れられてるキツネに
こんな風に話しかけられるのはきっと。


キツネ以上に、
コワイモノを知ってるから。

「ええ。しかも最強の船よ」

それを聞いてキツネを気に入ったのか
静雅はそっかと言ってソファに体を沈めた。

「ま、最強の船ならいいや。ダメなら船壊せばいいしな」

慎吾も簡易式キッチンに紅茶を入れに行った。


これで完全にキツネは打ち解けた。
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