不思議な“キツネ”ちゃん

「キツネちゃん」

授業をサボってキツネちゃんと
一緒に中庭にいるんだけど。


キツネちゃんの探し物を探しに来たのに

なぜか、キツネちゃんは探さないし。


なにを探してるのかも、
教えてくれないし。


「なあに?鹿野ちゃん」



ただ、空を見てるだけ。


いや、
もしかしたら見てないのかもしれない。



中庭は桜がまだ、咲いている。
5月なのに。

桜の吹雪みたいに花びらが風にのって
空を舞う。


桜の下にある古びたベンチに座って、

肩に和傘を差しているキツネちゃんは

もう、人には見えない。

別世界の何か。



「なにを探しに来たの?」


再びキツネちゃんに問う。

キツネちゃんは
ずっと空に顔を向けたまま。


「探し物はここにはないよー」


ここにないのなら何故来たんだ?

そもそもキツネちゃんに
探し物なんてあるのだろうか?


「じゃあ、なんで?」


中庭から見上げると
真っ青な空と屋上の一部が見える。

キツネちゃんは何を見てるのだろうか。


「うーん、私の探しものはねー、、、」

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