不思議な“キツネ”ちゃん
鹿野朱里《サイド》
屋上でつい泣いてしまった。
あまりにも悲しかったから。
疑われた事も。
シンヤ君を疑わせた事も。
私は疑うときの苦しさを知ってる。
信じたいけど信じられなくて。
そんな自分が嫌だし、
疑い始めると止まらなくなるのも嫌だ。
だからシンヤ君に謝った。
「ねえ、シンヤ君」
「ん~?」
「もう離してくれる?」
「ん~、もうちょっと」
いやいや、もうちょっとって、
さっきも言ったよ。
もう二時間目も始まったし。
泣いてる時から
ずっと私は彼の腕のなかにいる。
後ろから抱いてきたシンヤ君。
背中が暖かくて眠くなる。
「私、寝ちゃいそうだよ」
そう呟くと。
「いいよ、寝ても。起こすから」
「いやいやそれは悪いよ」
「大丈夫、おやすみ」
優しく背中を撫でてくれるシンヤ君。
だから、眠くなるんだって。
彼の心臓の鼓動を聞きながら、
すこし強く抱き締めてくれる彼に
心のなかで言って目を閉じてしまった。