不思議な“キツネ”ちゃん


心の中で葛藤しているのはきっと俺だけじゃない。


翔太郎はよくわかんないけど、
優は俺と同じ気持ちだと思う。


「離れるも離れないも朱里が決めることだろ」

「でも俺らが先に行動しなきゃ、」

「朱里が危険になる?」

優が言いたいことがわかってるみたいに話す啄をじっと見つめる。

「それでなに?」

「「「は?」」」

「だから、それがなんなの?」

ああ、そうだった。
こいつはまだ朱里ちゃんを仲間だと思ってないのか。

啄はこの中では一番親しみやすくみえるがそれは嘘だ。
この中では一番人を信じてないしモノとして考える。
翔太郎も性格は悪いが自覚はしている。
でも啄は自覚がない。
だからその分、たちが悪い。

「危険だけどそんなの俺は知らないよ」

啄の目はものすごく冷たかった。
朱里ちゃんの前では一度も見せなかった本性が出てくる。

「彼女の事は俺に関係ないんだから」

「でもお前も気に入ってるだろ!?」

優が反論するがきっと意味はない。
仲間以外をモノとしか思ってない、
朱里ちゃんを仲間と思ってない啄には。

「気に入ってる?」

また冷たい顔で笑う。
本当に朱里ちゃんの前にいる時とは別人のようだ。

「みんなが、でしょ?俺じゃない」

でも仲間と認識したらなんでもする啄を
俺は、いや俺らは離せない。

「なっ!?てめえ!」

優が啄を殴ろうとした手を止める。

「やめろよ、優」

「っな!」

「啄はもともとこーゆー奴だよ」

今まで黙って見てた深夜が優を宥める。

優は見た目は冷静だか本当は感情的だ。
何かとすぐに信じてしまうほど単純、
てか純粋だ。

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