実は彼、ユーレイでして。
「唯、」






あたしの目の前に降りてきた雫が、何かを言おうとする。





「呆れてたろうなぁ、おばあちゃん」





それを遮るように、呟く。





「…どうした」

「だってさ。せっかくおばあちゃん助けてくれたのにさ。あたしずぅ~っと、ぐちぐち、ぐちぐち、『死にたい、死にたい』って。4年も5年も。ホントバカだね、あたしって」






何年も何年も、助かったコトを後悔していた。






毎日のようにめそめそ泣いてるあたしを、お婆ちゃんはずっとそばで見ていたのだ。





命を助けてくれた当の本人を前にして。





なんで助かったんだって。





バカヤローって。





死ねばよかったって。





毎日毎日言ってただなんて。






それが本当に申し訳なくて。
胸がぎゅうっと締め付けられる。





おばあちゃんは、あたしを助けてくれたのに、余計なお世話だったみたいに泣いて、泣いて、泣いて。





「バカだよ、あたしは」




2回、3回と、抱えた膝に頭をぶつける。





「勝手すぎるよ、バカだよ、あたし。ホントバカ」






「…俺と喋れたのも、幸運だったかもね」

「…え?」






しばらく黙っていた雫が、ニコリと微笑んだ。





「唯に俺が見えたから、唯はばあちゃんが助けてくれてくれたってコトを知れたんじゃん」

「……」






あたしの正面に腰を下ろして、雫があたしと同じ目線になる。





雫の右手が、あたしの頭の上にトンっ、と乗せられた。







ワシャワシャ、と髪を撫でる感触。






「ばあちゃんは唯の守護霊なんだ。唯のコトだったらなんでも知ってる。助かった唯が一番ツラいってコトも知ってるんだ」





小さな声で、雫が語り出す。





「ばあちゃんは、事故の時、唯だけが助かってもツラいって知ってて、分かってて、それでも唯を助けたんだ。それはさ、やっぱり死んじゃったら終わりだからなんだよな」






少し控えめに、雫があたしの肩に手をかけた。






「でもさ、ひとりで、キツかったよな」





その言葉で、今までの色んなことがフラッシュバックして。





いっぺんにパンッ…って弾けた。

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