実は彼、ユーレイでして。
「帰ろっか。今日は豪華に焼肉!」




膝をぽんと叩いて、立ち上がる。





それを見て雫も立ち上がり、あたしと向き合った。






「…唯」

「なに?もちろん牛肉も買うよ。特売じゃないヤツ─」





言いかけて、口をつぐんだ。





雫が苦笑しながら、こっちを見ている。





「…なに?」





その表情に、胸がぎゅうっと締め付けられる。





「なんつーか、その。ホントに言いづらいんだけど」






『参ったなァ…』と言いながら起き上がった雫の姿を思い出して、あたしはなんで今まで考えなかったんだろうって、自分の数学力のなさを呪った。





「…今日、なの?」

「あれ、ホントに察しがいいね、最近」






あたしが雫に出会ったあの日。






よく食べるペットは、期限つきの守護霊だった。






あたしの元々の守護霊である、母方のおばあちゃんのケガが治るまでの、2週間。






臨時のアルバイトとしてやってきたのが、この神谷雫だ。







「まー、確かにしっかり日にちが決まってたワケでもないんだけど」






鼻をぽりぽりとかきながら、視線をあたしから逸らす雫。







「今日でバイトはおしまい。どっちにしろ、唯とは今日でお別れだったんだな、これが」






涼しげな風がびゅうっと吹いて、雫の学ランの裾と、あたしの制服のスカートを、ひらひらと揺らしていった。
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