実は彼、ユーレイでして。
雫の話を丸々信じるなら、こういう話になる。





人間は、この地球上で生まれ、死ぬ。






死んだ人間は、どこに行くのか。




いや、それ以前に。




死んだ人間は、どこかに行くのか。





それが一番基本的で、重要部分であることは、あたしにも分かる。




雫の答えは、こうだ。




「話せば長くなるけど、結論から言えば、人は死んだ後、必ず行く場所がある」




らしい。





「雫はそこから来たってコト?」

「そう」





「『あの世』って考えればいいのかな」

「んー、乱暴にいえば、そうなるね。あんまりいい表現じゃない気もするけど」





つまり、人間は死ぬと「あの世」に行く。らしい。





「ただ、唯が思ってるような世界じゃないことは確かだ」

「どういうこと?」





「『あの世』…俺たちの中で『休憩所』って呼ばれてる世界は、この現在世界とそんなに変わらない」

「天国とか、地獄とかは」





「ないない。あれはブッダの妄想」

「へぇ……」





だんだんあの世……いや、「休憩所」のアウトラインがはっきりしてきた。





「人間は死ぬと、まず全員『休憩所』のお役所の待合室で目を覚ますワケ。で、係のヒトに呼ばれんの」

「なんで?」




「そりゃ、個人情報の識別と、住居の割当てのためでしょ」

「そうじゃなくて。なんで死ぬと待合室で目を覚ますワケ?」





「そういうシステムだから」

「どういうシステムよ、ソレ」




「話すと長くなるけど、そうなんだよ、唯も死ねば分かる」

「まァいいや。で?続き教えて」





「えーと、で、係のヒトに呼ばれたら、役所の偉い人と喋る」

「日本語で?」





「うん。日本人には日本人の面接官が担当するのよ」

「へぇ。何聞かれるの?」





「あなたはどこどこの、だれだれで、こういう原因で死亡したって聞いてますが、合ってますか?って」

「本人確認ってヤツね」




雫の言葉には妙なリアリティーがあった。まさに体験に基づく説明っていう感じで。雫が嘘を言ってるようには、とてもじゃないが思えない。
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