ONLOOKER Ⅴ
写真
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「意外と人少ないにょろねえ」
恋宵の言葉は、直姫も感じたことだった。
ずいぶん人が減っている。
表彰式終了後の立食パーティーは自由参加ということにしてあるので、一通りの挨拶を終えるとさっさと帰ってしまう学校が多かったためだろう。
今までそれほどはっきりと感じたことはなかったが、改めて他校と交流できる場に出てみると、悠綺高校は近隣の学校からはいまいち評判が良くないということがわかる。
自分の学校と比べてしまうせいだろう、というのはわかるのだが、どうせ僻みと生徒は誰も気にしていない。
その余裕もまた、気に入らないのだろう。
この映画祭では、それが顕著だった。
なにしろ他の学校は、充実しない設備と小道具、足りない人員で、勉強や他のことの合間でなんとか映画を完成させているのだ。
撮影場所のこともあるし、撮った映像の編集だって容易ではない。
そんな苦労を重ねて作り上げた、思い入れの強い作品だ。
それなのに、時間と金をかけて、広大で見映えのする校舎で、在校生とはいえ人気の芸能人まで使って撮影した悠綺高校の作品が、最優秀賞をかっさらっていったのだ。
腹が立たないはずがないと、無関係の直姫でさえ思う。
住む世界が違うと、本気で思っているのだろう。
金持ちの家の子供だから自由に使える金が無限にあって、顎で使えるコネがいくらでもあって。
全国トップクラスの学力と云われる名門校に入学しても、ご子息ご令嬢だから、勉強なんて少しもする必要はなくて、時間は有り余っていて。
芸能人だから、なんの練習もしなくても演技が上手いのは当たり前で。
そんなふうに、本気で思っているのだ。
創造力がない、と思った。
そんな貧弱な発想しかできない人たちの作る映画が、面白いわけがないとさえ。
(……なにを苛立ってるんだか、)
制服姿の中で浮いている聖と恋宵をちらちらと見て、なにやらこそこそと言い合っている他校の生徒を見ながら、直姫は小さな動きで深呼吸をした。
別に、評価が不当だったわけではない。
審査員は主に、市や教育委員会の人間だ。
地味なグレーのスーツ姿で、落ちつなかげにうろうろしている人もいる。
彼らはちゃんと、見るべきところを見て、評価したはずだ。