ONLOOKER Ⅴ
「ここに来るなんて珍しいね?」
「あ、実は……お預けしたいというか、なんというか」
曖昧な物言いに、恋宵も聖も首を傾げる。
それが方向も角度もほぼ一緒で、真琴が思わず「あ、スゴイ」と呟いた。
恋宵が「落とし物?」と尋ねると、乃恵までが眉尻を下げて首を傾げる。
「いえ、あの……迷子ですの」
「迷子?」
夏生は今度こそ立ち上がって、乃恵のもとへ向かった。
直姫と真琴は作業を続けるべきか迷って、とりあえず一旦手を休めることにする。
「中庭でお会いしたんです。用事があって来たみたいなんですけれど、迷ってしまったみたい」
「それなら守衛さんのところに連れて行ったほうが」
「ええ、本当なら……でも、直接お連れしたほうが早いと思って」
「え?」
乃恵の前に、小柄な人影が出てきた。
夏生と聖の背はそれほど代わらないが、二人の肩より低いところに旋毛がある。
悠綺大学附属初等部の制服を着て、茶色いランドセルを背負った、少年だ。
それだけならまだわからなかっただろうが、その顔が目に入った瞬間に、彼ら全員が「あぁー……」と納得の声を上げた。