ONLOOKER Ⅴ


直姫たちには、なぜか浩太郎が激昂していて、真琴がその理由を知っている、ということしかわからない。

さっきまで横目で睨み合っていた夏生と顔を見合わせると、彼は首を傾げて、上目使いで直姫を見た。
その仕草があまりに自然だったので、そんなだから女みたいなんて言われるんですよ、という言葉が喉まで出かかる。
口を噤むことでそれをやり過ごしていると、恋宵が「あ」と声を上げた。


「バブルフォースレジェンド、あたし知ってるにょろ」
「え、ホントですか?」
「うん、こないだDVD借りたの。まだ観てないけろ」


真琴が浩太郎の前にしゃがんだまま、恋宵を仰ぎ見る。
直姫と夏生が見ているのに気付いて、恋宵が「あのね、特撮ヒーローにょろよ」と言った。


「スクエアデビル団ていうのが悪いやつらで、そのリーダーのコマツガオカ役が、まこちゃんだったのね」


ということは、レオパルドブルーというのがヒーロー側の登場人物なのだろう。
真琴の演じる役が率いるなんとか団のなんらかの悪事のせいで、視力を失ってしまったという役柄らしい。
子供が見る特撮ヒーローもので失明なんて重い展開があるとは、今時のヒーローは大変である。


「三年前か、懐かしいなあ。あの時に聖先輩と」


だいたいの話は掴めたが、なぜそこで聖の名前が出てくるのか。

直姫がわずかに不思議そうな表情を浮かべると当時に、休憩室の扉が開いた。
トレイに並んだグラスと、金髪が現れる。
聖はソファーのそばにいる彼らを見て、目を瞬かせた。


「あれ、座ってもらいなよ。オレンジジュースとミルクティー、どっちが好き?」


後半は浩太郎に向けて、爽やかな笑顔を向けながら言う。
そんな聖を見て、浩太郎は、目を丸くした。

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