ONLOOKER Ⅴ


「妹さんがすごく可愛いんだ。小学二年生の子が由乃(よしの)ちゃんっていって」
「へぇ、二年生……末っ子ですか?」
「や、その下にもう一人いるよー、四歳のが。光稀(みつき)っていう」
「で、徹平(てっぺい)が四年生か、それから、五年生の浩太郎と日南子(ひなこ)」
「双子なんですか?」
「そう。二人とも准乃介とそっくりなんだ」


紅はそう言って、可笑しそうに笑った。
本人はなぜかなんとか隠そうとはしているが、紅の小さいもの可愛いもの好きは、もはや周知の事実といっていい。
准乃介の小さな妹たちに懐かれて嬉しそうにする彼女の姿が、目に浮かぶようだ。

真琴も子供好きなのか、興味津々で聞いている。
恋宵は、「双子」と聞いて思わず反応してしまったのか、ぱちぱちと目を瞬かせた。
リラックスした猫のような瞬きだ。


「へー、あたし双子ってあんまり見たことないにょろ。案外いないものよねー、ひじぃ」
「えっ? あ、そうかな。そうかも」


突然話を振られて驚いたのか、聖が妙な反応をみせる。
准乃介は、苦笑いを浮かべて言った。


「そ? 五回も産めばどっかで双子出てくるって、母さんが言ってたけど」
「そ、そういう問題ですかね……?」


そんな話をしていると、浩太郎が准乃介の着ているブレザーの裾を引いた。
いつの間にか、茶色いランドセルを背負っている。
聖がサインしたノートと筆入れも、きちんとランドセルの中だ。


「准にい、みっきのお迎え。バスの時間」
「あ、そーだ」


時計を見て、准乃介は夏生を振り返った。
四歳だという末っ子の光稀のことだろう。
あとから紅に聞いた話だが、自宅に近い私立幼稚園に通っているらしい。

彼がなにか言う前に、夏生が答える。


「大丈夫ですよ、急ぎの用もないし」
「悪いね……あ、山崎さん、まだ中庭にいるかなあ?」
「えっとお、三十分は走り込みしてるから、まだいるはずですにょろよう」
「じゃあ勧誘は手伝えないけど、差し入れでもしとくわ」
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