ONLOOKER Ⅴ
おつかれー、と言って出て行く准乃介のあとを、浩太郎が追う。
兄に小声でなにか言われた彼は、扉の前でくるりと振り返った。
「ジュースごちそうさまでした。サインありがとうございました!」
ランドセルをがこん、と鳴らしながら、深々と頭を下げる。
顔を上げて、目が合った聖が笑いながら手を振っているのを見て、また屈託のない笑顔を浮かべて、それから生徒会室を出て行った。
重い扉が閉まり切る前に、サインをもらったことを嬉しそうに報告している声が聞こえる。
聖は笑ったままの顔で、言った。
「いやあーかわいいねえ」
「そう? なんか准乃介先輩が小さくなったみたいで、扱いに困る」
「言えてるにょろ~。無邪気な笑顔が違和感ありすぎだにゃあ」
「ふふ、でも、賑やかで楽しい兄弟だぞ?」
目だけで笑って言った紅に、恋宵がぐりんと顔を向ける。
その猫に似た目は、好奇心の色に染まっていた。
「紅ちゃんなんでそんなに准先輩のお家の家族構成に詳しいにょろ?」
「そうッスよね! 家行ったんすか? 紹介されたんすか? 家族公認すか?」
「はあ!? な、そんなわけないだろう!」
「由乃ちゃんに『お姉ちゃん』とか呼ばれてたりするのにゃ!?」
「そ、それはっ……まあ、」
きゃあきゃあと騒ぐ三人を眺めながら、真琴が苦笑いを浮かべる。
「それにしても、びっくりですね……もうすぐ七人兄弟」
「面倒見いいから下がいるかなとは思ってたけど」
「五人もいたらそりゃしっかりしますよねえ」
はは、と乾いた半笑いで言葉を交わす、夏生と直姫。
少しの沈黙のあと、真琴は、ぽつりと言った。
「出産祝いとか……用意したほうがいいですかね……」
「え……さあ……?」