ONLOOKER Ⅴ

 ***


そんな出来事から、数日経ったある日のこと。

生徒会室のテーブルの、入って右側の奥から二番目の定位置で、直姫は作業をしていた。
パソコンに向かって、今度の定期発表会のパンフレットを作成しているのだ。

何十種類も並んだフォントを流し見ながら、直姫は視線だけを上げた。
テーブルを挟んだ向かいには聖が座っていて、紙の束を見ながら電卓を叩いている。

その二つ隣、扉に一番近い席には、准乃介がいる。
彼もまた、ペンを片手に紙に視線を落としていた。
確か彼は、発表会の司会だったはずだ。
直姫のクラスが親睦会の演劇を披露した発表会の時も、ホールには准乃介の声が響いていて、その度に女子生徒からの悲鳴のような歓声が上がっていたような気がする。

生徒会室には現在、この三人しかいなかった。
真琴は仕事で欠席、紅は剣道部の稽古中、恋宵と夏生は、用事で南校舎へ行っている。

マウスから手を離して、直姫は腕を伸ばした。
肩が小さく鳴る。
立ち上がって、二人に声をかけた。


「先輩たち、なんか飲みます?」
「あぁ……レモンティーにしようかなあ。俺、自分でやる」
「あっ、レモンティー俺も飲みたいっす! 准乃介先輩のレモンティーまじ美味しいんだよー」


准乃介が立ち上がると、聖がぱっと顔を上げて言った。
後半は、直姫に向けての言葉である。

准乃介が小さく笑って、「直姫も飲む?」と言ったので、直姫は頷きながら答えた。
自分からティータイムと言い出したのに、結局淹れてもらうことになってしまっている。
直姫はごく小さく苦笑した。

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