ONLOOKER Ⅴ
「気になる?」
「……すいません、別に」
「ははっ」
率直に言うと、准乃介は声を上げて笑った。
紅の趣味らしい、真っ白のカップを傾けてから、直姫に流し目を送る。
「直姫は他人に興味のない人間だと思ってんだけど。変わったねえ」
「……先輩に、なにがわかるんですかー」
准乃介の口調がまるで保護者で、直姫は唇を尖らせて、わざと可愛げなく言ってみせた。
横から、面白そうに目を細める聖の茶々が入る。
「そーゆうとこじゃん?」
「なんですか?」
「冗談っていうか、軽口叩くようになった」
「……そうですか?」
「だよー。直姫のくせに生意気ぃ」
歯を見せて笑いながら聖が言うと、窓のほうから、准乃介まで「なまいきぃー」とからかってくる。
直姫は特に答えずに、眉を寄せて、レモンティーを一口飲んだ。
不意に一瞬の沈黙が訪れる。
三人が三人とも紅茶を口にしていて、飲み込んだ一拍の後に、聖が言い出す。
「この間、映画祭あったじゃないすかー。」
「うん?」
「あの時俺と恋宵ちゃん後から行ったんですけど、会場近くで人にバレちゃって」
「あぁ。大変だったみたいだねぇ。追いかけっこしたんだって?」
「そうそう、そうなんすよ。で、たまたま見つけた喫茶店に逃げ込んだんです」