ONLOOKER Ⅴ


「特待試験って」
「え? あぁ……」


紅も驚いた顔で、直姫を見返した。
ぱし、ぱし、と、カメラのシャッターのように瞬きをして、答える。


「直姫、聞いてなかったのか? 准乃介は、お前と同じ、特待生なんだ」
「初耳です……」
「そうか……まあ、普段特別な扱いを受けることはあまりないからな」


悠綺高等学校の特待制度は、今から四年前に開始したシステムだ。
難しい試験と数回に渡る面接、厳正な審査を受け、生徒会に入って他の生徒の手本になるような学生生活を送ることを条件に、学費の大部分を学校が負担する、というものである。

試験を受けるほとんどの生徒は、学費のためなどではなく、特待生というステータスと理事との太いパイプを手に入れるために受けている。
だからこそ、書類による一次審査を通ることすら非常に難しいのだ。
基本的には紹介制なため、理事長や職員たちと何らかの繋がりがなければ、受けることすら許されない。

そんな特待制度が始まって二年目、今から二年前にその栄誉ある地位に就いたのが、沖谷准乃介だというのだ。


「じゃあ、生徒会へも特待の条件で……?」
「あぁ。枠は二人だったんだが、一人は該当者なしということになった」
「試験に落ちたんですか?」
「そうだろうな……去年は一人もいなかったよ。だから生徒会選挙は、生徒からの投票になったんだ」
「あぁ、そっか」


特待生の枠と新入役員の枠は、毎年同じ二人なのだろうか。
だとすれば、該当者なしの場合は、二人もしくは一人を投票式の選挙で選ぶのだろう。
ということは、二年生の三人と、紅は、選挙によって選び出されたということだ。

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