ONLOOKER Ⅴ
「なんでも、事務所の社長とうちの理事長が知り合いらしくて……毎年何人か受験生を推薦してるそうだ。もちろん、一般入試にだが」
「准乃介先輩は優秀だったから特待受験だった、ってことですか?」
「そうかもな」
紅の顔から少し視線を落とすと、浩太郎が不思議そうな顔をして、二人を見上げていた。
先日聖と恋宵が言っていた話だが、浩太郎と双子の姉、弟の徹平は、去年の春に悠綺の初等部に転校してきたらしい。
次女の由乃は、その同じ年に入学した小学校二年生。
一番下の光稀だけは悠綺の系列ではない幼稚園に通っているそうだ。
幼等部から悠綺の紅や夏生や聖とは、育ち方が違う、と言っては語弊があるだろうか。
だが、教育面でも徹底している由緒正しき名家とは、なにもかもが違うことは確かである。
直姫はふと、映画祭の日、聖がぼそりと呟いた言葉を思い出した。
とあるゴシップ誌の記者が一年前に書いたという、人気モデルのスキャンダル記事についてのことだ。
写真に写っていたのは、すらりとした長身の青年と、着物姿の少女だった。
Tシャツとジーンズというラフな服装の青年と、姿勢正しく上等な着物を着こなす、まさに“お嬢様”といった感じの少女。
――『身分違いの恋』。
紅や夏生のような、ズレた言動のあまりない人だとは思っていた。
それはつまり、こういうことだったのか、と気付く。
「……なるほど、どうりで」
「ん?」
「准乃介先輩は感覚がまともだと思ってました」
「……どういう意味だ?」