ONLOOKER Ⅴ
「これはまずいですにゃー……あっちも気付いた」
「まじ?」
ちらりと横目で視線を送った先には、学生服姿の少女が五人ほどでこちらを窺っている。
少なくとも柏木聖が歩いている、ということだけは、明らかに気付かれているようだ。
『一緒にいる子誰?』
『アイドルかなんか? ギターケース持ってるよ?』
『……ねえ、聖くんと同じ高校の、』
『え? ……Ino?』
そんな声が聞こえてしまって、恋宵は思わず呟く。
「あ……やばくにゃい?」
「え? バレた?」
小さく頷く。
振り返る勇気はないが、恋宵の耳が確かなら、背後からは遠巻きに複数の足音に追いかけられているらしい。
そして、恋宵の耳が確かでなかったことなど、聖が彼女と出会ってから一度もなかった。
二人はちら、と顔を見合わせる。
このまま映画祭会場へ向かえば、あらぬ誤解は避けられるかもしれない。
だがそれまでに完全にバレて写真なんて撮られては困るし、制服も着ていない二人が駆け込んで、騒ぎにならないはずがない。
そうなれば准乃介や真琴にまでかけなくていい迷惑をかけてしまうかもしれない。
逡巡ののちに二人が出した結論は、同じものだった。
小さく頷き合う。
そして、聖がかすかな動きで右に顎をしゃくった瞬間に、角を曲がって走り出していた。