ONLOOKER Ⅴ

「それで……どうかしたの?」
「今日の放課後、他校の生徒がわが映研部の機材の見学に来ることになってますの。あの映画祭にも参加していた学校なのですけれど」
「見学……そっか、うちは使ってる機材もプロ並みだもんね」
「形から入るタイプですのよ」


麗華がはにかんだように笑う。
実力が伴っているわけではない、という謙遜の言葉のつもりだろう。

だが悠綺高校の映研部は、経験値こそないとはいえ、高校生とはとても思えない技術を持っているのは確かだった。
先日の映画祭での最優秀賞受賞も、それほど意外な結果ではなかっただろう。
しかし他の受賞作品との完成度の差があまりにも大きかったせいで、映画祭会場にいた他校の生徒から、反感を買いまくることになってしまった。

どうせはじめから出来レース、プロの役者を使うなんてずるい、使っている機材が高級だから、金と時間のかかる技術を使えるから、金持ちは暇だから。
そんな陰口を叩かれ、挙げ句の果てには金で雇ったプロに撮ってもらったのではないかとまで言われて、真琴もずいぶん不愉快な思いをした。

あの会場に、悠綺高校に好感を持っていた学生なんて、いなかったはずだ。
なぜわざわざ、気に食わない奴らのホームへ飛び込んでくるような真似をするのだろうか。
まさか隙を見て嫌がらせの細工でもする気では、とまで考えが及んだところで、麗華が続けた。

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