ONLOOKER Ⅴ

「それでね、佐野くんにおねがいがあるんですの。放課後、お時間いただけないかしら?」
「放課後? 今日の?」
「えぇ、急で本当に申し訳ないんですけれど……ちょっとした、演技指導というわけじゃないけれど、お力を貸していただけたら、と思って」
「演技指導って……僕が? そんな、全然なにもできないと思うけど」
「インタビュー感覚で、少しお話してくださるだけで構いませんのよ。ぜひプロの方にお願いしたいらしくて……駄目かしら?」
「うーん……今日かぁ」
「ご都合でも悪くって?」


困った顔をする麗華に、真琴も眉尻を下げた。
彼女の言い方から察するに、きっと見学に来るという他校の映研部の希望なのだろう。
一体どんな成り行きで機材見学なんてことになったのかはわからないが、もともと好印象を持っていない彼らにいいイメージを与えるチャンスだし、相手方の希望はできるだけ叶えておきたい、というのはわからなくない。

こんな時あの友人なら、「向こうが勝手に嫌ってるんだから、別に嫌わせておけばいいじゃん」なんて言うんだろう、と真琴は考えた。
その時、図ったようなタイミングで、件の友人の声が割り込んでくる。


「真琴、しばらく忙しいって言ってなかった?」
「あら、直姫くん。ごきげんよう」
「どうも」


直姫は、にこりと口許だけで笑った。

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