ONLOOKER Ⅴ
真琴は眉を歪めた。
そんなの、あんまりだ。
そもそも先方が是非にと言うから、演技指導を頼めないかと数人の生徒に声をかけたのだ。
そんなわがままを聞いてもらっておきながら、わざわざ時間を作ってくれた人をぞんざいに扱うなんて。
いくらなんでも、失礼が過ぎる。
聖が苦笑いなんてする理由はどこにもなくて、もっと怒ってもいいはずだ。
光村が、困った顔をして言った。
「すみません、うちの部長が失礼なこと……あの人、アイドルやモデルの人は役者じゃないなんて言って、見下してるところがあるんです」
そういえば映画祭の時も、真琴には真っ先に挨拶しに来たのに、准乃介の名前は出て来ないようだったし、他の三人に至ってはほとんど見向きもしなかった。
「僕は柏木さんの演技、自然で好きだし、映画祭の作品の沖谷さんの演技も、怖くて凄いと思ったんですけど……」
申し訳なさそうに言う光村に、聖はわずかに目を見開いた。
それから、その目をきゅっと細めて、大きな口を横に広げて笑う。
「ありがとー。後輩にフォローされるなんてだめな部長さんだなー、ったく」
「いえ、フォローなんてそんな」
聖が取り成すように笑うのも、古い友人が頭を下げるのも、真琴は複雑な気持ちで見ていた。
もしも真琴がこの話を受けていたら、親しい先輩が他校の生徒におざなりに扱われるさまを、目の前で見ることになっていたのだろうか。
やるせなすぎる気分に俯いた、その時だった。