ONLOOKER Ⅴ
光村が、部長、と宥めるように声を上げた。
真琴は、聖になにも言えない。
自分が思ってもきっと言うことのなかっただろう言葉を、聖が声に出したように思えたのだ。
「真琴が怒んないから俺が怒ってんだよ」
どこかで聞いたような言葉だ。
以前、直姫の口から似たようなことを聞いたような、と思い出す。
あの時は確か反対に、真琴が代わりに怒ってくれるから自分は怒らない、と言っていたんだったか。
だが、聖の苛立ちにも、田畑は怯む様子もなかった。
彼のほうも少し機嫌が悪いように見える。
本命だった真琴が彼の頼みを蹴ったことが、そんなに腹立たしかったのだろうか。
聞いたことがないくらい皮肉めいた響きで、「へーえ」と言った。
「KNIGHTの聖くんが、そんなに怖い顔していいんですか? イメージ守らなくちゃだめなんでしょ? お得意の演技したらいいじゃないですか」
美人が怒ると怖い、とはよく言うが、それは女性に限ったことではないらしい。
大きなつり目を細めた聖が、一歩田畑に近寄る。
光村とマリーの困り果てた顔が、真琴の視界には入っていた。
それらを尻目に、聖だけをまっすぐに見て、真琴は口を開いた。