ONLOOKER Ⅴ
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田畑がなにか言おうとして、結局なにも言わずに立ち去った、その後のこと。
階段の下に取り残された四人は、しばらく黙っていた。
余震に怯えるような、余韻が消えるのを耳をそばだてて待っているような、そんな気分だ。
やがて、真琴が言った。
「あ、部長さん、帰っちゃったかな? 光村一緒に行かなくていいの、置いてかれちゃうよ」
それはいつもの真琴だった。
穏やかで、柔らかで、爽やかで、なんの邪気も黒いところもない、いつもの真琴だ。
苛立たしげに顔を歪めたのも、絶対零度で突き放してみせたのも、すべて演技だったのだと、聖は気付く。
あの数分の間、いったい誰が彼に憑依していたのだろう。
光村が呆気に取られて真琴を見ている。
「えっ、い、今の、えっ」
「あは……ちょっとふてぶてしすぎたかな」
そう言う真琴は、見慣れた苦笑いを浮かべていた。
息をする間に羽を裏返したような、そのギャップにぞっとする。
それと同時に、なぜ演技までして慣れない感情をあらわにしたのかも、少し気になった。
聖が尋ねると、真琴は小さく首を傾げる。