ONLOOKER Ⅴ
「だって、あそこで僕が黙ったままで、聖先輩に怒ってもらいっぱなしなのはなんか、違うと思ったので」
「うちの部長が……悪かった、ほんっとうにごめん」
「いいよ、僕はきっともう会うことないだろうし」
「でもマジで怒ったかと思ったよ……ビビったあ」
ほう、と安堵の溜め息を吐く光村に、真琴は困った顔をした。
一瞬迷うような仕草を見せて、それから口を開く。
「僕が怒るとそんなに変?」
「え?」
「なんで僕が怒っちゃだめなの」
光村は目を丸くした。
真琴は、なにを言っていいかわからなくて戸惑っているような表情をしていた。
「芸能人だから? 役者だから怒っちゃだめなの? 違うよね。そうなる前からそうじゃん」
「さ、さの」
「人見知りだから? 優しそうだから? 大食いで変なやつだから? お父さんが社長だから? だから僕はなにされてもにこにこしてなきゃいけないの」
光村が、ぎくりとした顔をした。
同時に、驚きの色もあるように見える。