ONLOOKER Ⅴ
「僕だって普通に普通の人間だよ。食べ物の好き嫌いだって結構あるし、お笑い番組見てるとほんと笑いのツボが小学生だなって思うし。映画観ててつまんなかったら寝ちゃうし、犬はかわいいけど世話は面倒だなとか思ったり、勉強しなきゃいけないのに漫画読んでたらいつの間にか真夜中になってたり、早起きなんか大っ嫌いだし。タイプの子に会ったらテンション上がっちゃうし、ゴミ箱に投げたゴミはだいたい入らないし、四時間目の授業はお腹鳴るの気になって全然集中できないし」
時々つっかえながら、視線をうろうろさまよわせながらも、真琴は言った。
聖が小さく口を開くと、「ま、まこと?」という音が出る。
マリーのほうを見ると、目も口もぽかんと丸く開いたまま見返してきて、きっと自分も今こんな顔をしているんだろうと思った。
「それじゃだめなの。それのなにがいけないの」
拗ねたような声色。
いつもの困った苦笑いでも、さっきのような誰かが乗り移ったみたいな演技でもなかった。
そうわかったのは、その顔が、どんな表情を作ればいいのかわからずに迷っているように見えたからだ。
むすっとした膨れっ面。
まるで、友達と些細な喧嘩をした高校一年生みたいだ。
今までに見たどんな顔よりも、年相応だった。
だがその表情も、一瞬でかき消える。
思い出したように、いつもの苦笑を浮かべた。
「……って、あの頃言えてたら、楽だったのにね」