小さな恋のうた
琥珀は匂いと表現したが、匂いというよ りは気配と言った方が正しい。
人の残留意識のようなものだ。
長い時間、誰かと意識を通じ合わせてい ると、 その人の意識の滓とでもいうもの が身体に留まることがある。

誰とでも起きるものではなく、
余程に心を通じ合った者同士にしか発生しない現象だ。
それは愛裕が今日、心を通じ合った相手と長い時間を過ごしてきたということを意味している。
しかも、愛裕から感じる気配はまだ若 い男のものだ。

つまり、今日の愛裕は長い時間、
それも心を許しあった男と一緒に過ごしていたのだ。 いや、おそらく今日だけではなくこれまで毎週土曜日はいつも。

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