小さな恋のうた
「そうだ、律。愛裕はまだ戻ってきて いないな?」

「は、はい!愛裕さんはまだお戻りに なっていません」

「ならば愛裕に伝えろ。戻ったらすぐオレのところに来るようにと」

「!?・・・はい。わかりました、琥珀様・・・」

これで律には琥珀が誰を憎んでいるのか わかった。
愛裕だ。
よく見ると琥珀の足元に何か光る物が散 らばっている。
律はそれに見覚えがある。
あれは遠見の鏡だ。
多分、琥珀は遠見の鏡で愛裕の何かを見てしまったのだ。
それに激怒して遠見の鏡を叩き割ってし まったのだろう。

今の琥珀の前に愛裕を連れてきたらどうなるか・・・律はその恐ろしい想像を必死になって頭から追い払った。
仕方がないことだ。
ここで愛裕を差し出さなかったら琥珀は全てを巻き込んで自滅してしまう。
それを防ぐためには犠牲も仕方がないの だ。
律はそう自分を納得させるしかなかっ た。
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