小さな恋のうた
普段、武道もやっている琥珀。

その琥珀が“立ちくらみ”だけでこんなことになるだろうか。
そんな考えを巡らせながらも、 愛裕はしっかりと琥珀を支えた。

「……すまない」

「いいえ。さ、戻りましょう」

琥珀と一緒に、一歩一歩、確実に床を踏みしめて、琥珀の寝室へとたどり着いた。
お風邪を召されているようでもない。
お熱があるわけでもない…。
でも琥珀様……辛そう…。
私に何か出来ることがあればいいのに。

「愛裕、すまなかった……
こんな所を見せて……」

「いいえ!
気になさらないでくださいっ」

「でも、助かったよ。ありがとう」

「そんなこと……」

「今日、あったことは、他の者には秘密にしていてくれ」

「琥珀様がお望みであれば、そういたします」

ベッドに入った琥珀に、愛裕が優しく布団をかける。
そんな愛裕を琥珀が優しい瞳で見つめた。

「……愛裕でよかった」

「え?」

「あそこで会ったのが愛裕でよかった。他の者じゃ、大騒ぎだ」

琥珀が苦笑いしながら言う。たしかにそうだ。家中ダイパニックになりかねない。

「もう遅いから戻れ……ありがとう」

「はい」

愛裕は静かに部屋を出ていった。
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