小さな恋のうた
次の日。
トントン……
「琥珀さま、おはようございます!!」
「あぁ……」
琥珀の返事はいつにもまして曖昧だった。琥珀は恥ずかしかったのだ。あんな、情けない自分を見られてしまったのだから……
色々質問してくると思っていた。
……しかし、愛裕は1つも昨日のことについて質問してこなかった。
琥珀は正直安心しながらも、少し不満だった。
「あ…そうだ。愛裕、今日いとこがくるから」
「いとこって誰でしょうか……?」
愛裕はいとこがいることを知らなかった。当たり前だ。愛裕は本来は“いけにえ”として働かせて貰っていたため、此処で働くために覚えなければならない家族構成などを一切やらないで来たのだから。
「それで……」
トントン…
ドアがなった。
「あ……」
「おれが出るよ」
琥珀はソファーから立ち上がり、歩きドアを開けた。
その瞬間
「琥珀~!!会いたかったわ~!!」
と言い琥珀に抱きついた少女が……。
愛裕は驚いて芽を見開いたが、琥珀は冷静だった。
「……やめろよ。紫苑〈シオン〉」
溜め息をつきながら琥珀は言った。
呆れているようで、どこか優しい声で。
「別にいいじゃない。
だって、私、婚約者なんだから!!」