小さな恋のうた
「っ………」

琥珀はどうすればいいのか分からなかった。でも、これは譲れない。
それは、確かなことだった。

「……琥珀、こっち向いて」

「ん?」

紫苑に言われ、琥珀が振り向いたとき
…………柔らかい感触がした。

「ばっ……お前!!」

「いいじゃな~い。琥珀のファースト頬キス奪っちゃった~!!」

紫苑がブイサインをしながら言う。
……そう。
紫苑は自分の頬に振り向いた琥珀の唇をつけたのだ。
琥珀は文句の1つでも言おうとした……がやめた。そんな琥珀を見てなのか

「それじゃあね!!琥珀!!」

紫苑は笑顔で言う。
その瞳には涙を浮かべて……
そして、走って帰っていった。

……紫苑は最後まで優しいヒトだった。

破棄したら自分がどうなるか知っていたのに…“幸せ“になれなくなると分かっていながら琥珀と愛裕を優先させるほど……

そして彼女が“彼“と出会うのはまた別のお話で。


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