小さな恋のうた
とんとん……

愛裕が深い眠りに堕ちてから数十分が過ぎたころに愛裕の部屋のドアがなった。
愛裕は眠っているので気づかない。
いつもなら今はまだ愛裕は起きている。
だから不思議に思ったのか少し経って誰かが入ってきた。
………琥珀が入ってきた。

紫苑は逃げるように帰っていった。
……それを琥珀は追いかけられなかった。
紫苑が泣きながら帰ったのは、自分のせいだから……。
だからこそ、“追いかける“ことは出来ない。期待を与える行為はしない。それは、紫苑も望んでいない。
琥珀にとって、紫苑は姉でもあって…妹でもあった。
紫苑が自分に対して特別な感情を抱いていたのだって分かっていた。それに、どこか甘えているって自分でも自覚していた。だからこそ、決めたんだ。
もう………終わりにしようって……

でも、愛裕が突然居なくなったのは驚いた。本当に焦った。
いくら経っても来なかったから、探しに行って周りにいた人達に聞くと走ってどこかに行ったと聞いて……
話を聞いて辿って行くと家に愛裕の靴があって……すごくほっとした。
居なくなるって考えるだけでぞっとしたことを自分でも気付いた。……多分、愛裕に依存しているのだろう。
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