小さな恋のうた
愛裕がいるのには安心したが、どうして勝手に帰ったりしたのかが分からない。
いつもの彼女だったら何かしら声をかけてから帰るはずだ。
誰か嫌な人に会った………?
何か嫌な光景を見てしまった………?
もしかして、俺と紫苑のやり取りでショックを受けたのか?
いや、そんなことは絶対にないだろう。
これは俺の願望だ。
嫉妬してほしい、気にしてほしいっていう願いだ。
こんなことを考える自分がいることに驚いた。こんな欲深い自分がいるなんて知らなかった。
愛裕に会って色々な事を学んだんだ。知っていったんだ。
愛裕に対してだから嫌じゃなく、逆に嬉しいような…気持ちになる。

俺は愛裕に救われたんだ。
だから、俺が愛裕を救いたいんだ。

何かあるのか心配になって愛裕の部屋に行ってみたが、明かりもないし、物音も聞こえない。
寝ているのだろうか……?
だったら寝かせればいい。でも、一目見て行きたい。
ちょっとだけ顔を見たくて部屋にはいっていった。
愛裕はベッドに布団も掛けずにねていた。寒そうに見える。
琥珀は荷物を部屋の隅に起き、そっと愛裕に毛布を掛けた。
間近で見る愛裕の顔に鼓動が高鳴っているのが自分でも分かる。
それでも、愛裕の顔を見つめていたら愛裕の目尻に涙がたまっているのに気がついた。
誰が泣かしたのだろうか…?
どうして泣いているのだろうか…?
不思議に思いながら涙を拭きとろうとした、その時……


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