愛の言葉は囁かない
「なんか、照れるね」
「ふふ、うんっ」
ゆっくり、私に合わせて歩いてくれる裕貴くんと手を繋いで
右手にあるもらった指輪を眺める。
「安物でごめんな。大学生になったらちゃんとした婚約指輪渡すから。
結婚指輪も、ちゃんとしたの」
裕貴くんはまだ高校生で、しかも今年は受験生。
それなのに今までずっと頑張ってバイトして、私のために指輪を買ってくれた。
「これで充分嬉しいよ。
お金で価値なんて決まらないもん」
それが嬉しいのに、裕貴くんは謝る。
いっぱいいっぱい、私に謝る。
「うん…ありがとう」
ぎこちなく笑う裕貴くんに、私は微笑んだ。