赤の贖罪
――いや、そりゃ嬉しいよ?仮にも好きな人に声をかけられたわけだし、これで喜ばないわけがない。
実際、
『ちゃんと覚えててくれたんだ。しかも、心配しててくれたんだ……!』
と改めてときめいたりしてたワケだし。
けれど、密かに計画していた
『普段通りに振る舞って叫んだ事など無かった事にしてしまおう大作戦』
が完全におじゃんになったことも確かなワケで。
(声を掛けてくれたのは確かに嬉しかったんだけれども、
あの話題は蒸し返さないで欲しかったというかなんというか……!)
なんて心の中でつぶやきながら、私はベッドから降りてシャワールームへ行く支度をはじめる。
悪夢と共に少しだけかいていた寝汗を、この複雑な気分と共に洗い流してしまおうと考えたのだ。
私は枕元の時計を確認してから、下着と制服を持って部屋を出る。
……その頃には、夢の中で誰かが必死に叫んでいたことなど頭からすっかり抜け落ちていた。
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