赤の贖罪
――私達伊蔵高校の修学旅行は、2泊3日の予定。
一日目は、宿泊所への移動とその近くにある湖での自由時間。
二日目は、班ごとに決めた目的地へとタクシーで連れていってもらう『タクシー研修』。そして三日目に帰宅だ。
……ちなみに、二日目のタクシー研修はどこへ行ってもいいという訳ではない。
あらかじめ班ごとに一つテーマを決めておき、そのテーマに沿った場所を目的地として移動するのだ。
そして修学旅行から帰ったら、一人一枚テーマに沿ったレポートを提出しなければならない。
なので今から、そのテーマを決めるために班の全員で話すんだけど……。
「お願いだよ亜由美ちゃん、俺の提案するテーマに清き一票を!」
「うーん。でも、祟りはちょっと怖いかなぁ」
「怖いからホラーなんだよ!そして夏といえばホラーなんだ!!」
「う、うぅ……」
「さぁ、今こそ一票を!さぁ、さぁ、さ……って痛ぇ!?」
悟くんの強引な態度に、断りきれずうーんと唸る私。
しかし、なんとか頷かせようと悟くんが身を乗り出した瞬間、その額に突然鮮やかなチョップがとんできた。
驚いた私がそちらへ目を向けると、
「亜由美になにしてんのよ、香椎。次は殴るわよ……?」
「優香!」
幼なじみにして私たち5班の班長である五十嵐 優香(イガラシ ユウカ)が、右手を固めて仁王立ちしていた。
その隣には、優香の彼氏である宮崎 洋平(ミヤザキ ヨウヘイ)が呆れ顔で立っている。